測定用Mic Earthworksについて No.2
3.0 測定専用マイクアンプ(LAB1)
本機は音響設備の現場や生産工程での測定で使用するため、Mシリーズ・マイク専用に開発されたアンプです。ゲインの調整は正確を期すため、校正されたステップ式のコントローラを採用しました。BNCとRCAによる独立した三系統のアンバランス出力を備え、一般の測定機器とのインターフェースが容易です。 |
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主な機能 ●18VAC外部電源アダプターの採用により電源周波数や高調波を検知不能なレベルまで低減。 |
概要....
LAB1は精度を要求される製造・開発およびフィールド試験用に開発されたプリアンプです。その為出力はアンバランスで複数用意されています。高精度を追求し1Hz~200KHz±ldB、方形波の立上がり時間は0.25μsecというスペックを実現しました。信号の歪を抑え精度を向上させるため信号経路からは電解コンデンサーやマイラー・コンデンサーを排除しました。スイツチは全て金メッキ仕様です。電子バーツは一つ々丁寧に選別したものを使用しています。
ゲインセレクター...
このセレクターで出力レペルを設定します。一般の測定器の倍率器と同様1,2,5,10、という倍率でゲインを設定でき、偏差は3%以内に校正されています。ここで設定した信号はFIXED GAlN OUTPUTと書かれたコネクター(BNCx1,RCAx1)から出力されます。
出力バーニア...
.上記のセレクターで設定したゲインをVARlABLE OUTPUTと表示されたツマミによって連続的に一20dBまで減衰できます。ここで設定した信号は二系統のバッファアンプを介して出力されます。一系統はBNCとRCA端子から、もう一系統はBNC端子から取り出せます。この方式によって複数の機器へ同時に信号を供給することができ、負荷の影響を避けられます。したがってLAB1は音声信号分配器としてもご利用頂けます。
STANDBYスイッチ...
試験中出力をミュートできます。このスイッチが"STANDBY"になっていると、プリアンプとマイクはONですが、出力はミュートされます。これはマイクを交換したり移動するときの音を切ることができます。
PORALITYスイッチ...
極性を反転します。NORMの位置では入力の二番ピンに正の電圧が印加されると出力はプラスに振れます。
取り扱い上のご注意
LAB1は測定用に設計されたモデルですが録音にご利用頂いても優れた音質を誇ります。
最大入/出力レペル:LAB1の最大入力レペルはゲインOdB時に7Vrms(20dBV)、最大出力レペルは最大ゲイン時にlOVrmsです。
過大入力保護:入力増幅段のICは過大入力に対してツェナーダイオードで保護されていますが、非常に大きい入力が加わると部品を傷める可能性も有ります。入力IC(アナログデバイスSSM2017)が損傷を受けた場合、金メッキを施したソケットに装着されていますので簡単に交換することができます。
出力の保護:出力回路はあらゆる状況を想定して、整流素子とツェナーダイオードで保護されています。出力増幅段のアンプはソケットに装着されていますので、万一過大な電圧や電流で損傷を受けた場合その場で簡単に交換することができます。それそれ独立した三系統のアンプから出力されますので、損傷を受けた場合でも他の出力を利用できますから安心です。
技術メモ インパルス応答
一般に音楽パルスがダイヤフラムに印加される際、波長が短かくなる程ダイヤフラムの挙動による影響を大きく受け波形が歪み易くなります。また再生パルスにリンギングや共振、オーバーシュートを抑制できれば入力パルスに忠実だと考えられます。例えば、パルス信号によってダイヤフラムが振動し、また静止するまでの間に余分な振動(リンギング〕が発生すれば'本来の波形にそれが加わるため歪が発生し、可聴帯域外の周波数特性に顕著に影響が現れます。そこでインパルス特性を測定する必要が生じます。この測定は可能な限り帯域を限定し、さらにパルス幅は短いほど適しています。これは技術的に難しく簡単に実現できるものではありませんが、Earthworksではこの測定に電気のスパークを利用し、印加されたパルス波形がどの様に歪むのかを測定しています。Earthworks社では波形を200KHz(分解能5μsec)まで正確に測定することができます。本文に記載されているインパルス・レスポンスはこの方法によって測定されたもので、確実に音の善し悪しを判断することができるようになりました。
技術メモ タイム・コヒーレント
音波は唸りや定在波を発生することからも判るように干渉性(coherent)があります。したがって位相特性が、周波数によってマチマチであったり、機械的な理由でゆらぐことは干渉を生じ音を劣化させます。時間的にコヒーレント(coherent)である音波の位相をコント□一ルすることは非常に重要です。アースワークスでは特に位相を正確に再現することを目標にしています。例えばトランジェント特性やインパルス応答を改善するのもその為です。本文中で『タイムコヒーレントな周波数特性」と表現されていれば、単に見かけの特性がフラットであるのではなく、どの周波数成分の位相も時間的に正確に変換され、その結果としてフラットなF特が得られことを示します。Earthworksのマイクに添付されるF特の実測グラブは、お買上け頂いたマイクの位相特性が正確なタイム・コヒーレントな周波数特性であることを証明するものです。
価格表 平成10年7月現在
LAB1 Preamp |
\125,000
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Mシリーズ専用プリアンプ |
今回は、測定用マイクM30/M55の専用プリアンプLAB1を紹介しました。
如何でしたか?細かいところまで神経を使い、作られているのではないでしょうか?
また、入力出力段のICが金メッキによるソケットによって交換可能と言う所はいかにも現場での状況を考慮した仕様ではないかと思われます。ただ、一つ疑問に残るのは金メッキされたソケットがどれだけ接点不良を起こさないか?については実際の使用によってのみ、実証されるものと思われます。
出力コネクターがBNC,RCAと言うところがいかにも測定用と言われる所以だと思います。事実、私の調整用のラックには敢えてキヤノン出力をBNCにパネルで変換しています。
最後に技術メモのタイム・コヒーレントの項目ですが、非常に重要な事柄が書かれています。
周波数特性が同じなのに音が違うと言うことが現実に有ります。その原因は音の波形に含まれる時間(位相)が大きく関わっています。この時間(位相)をコントロールすることによって、より原音に近い音を得ることが出来るのです。
私の仕事が正に上記のことを踏まえての仕事です。少し分かりにくいとは思いますが、例えばPAの場合、ホールのステージの上下(かみ、しも)にSP(スピーカー)を組みます。(これは、常設のSPでも同じです。)ある客席での位置で聴いた場合、SPからの直接音とSPから出た音がホールの壁や床などによって反射した音とがミックスされて聞こえてきます。(これがホールによって音が違う原因でも有ります。)いわゆる、この時点で時間(位相)がずれて聞こえてくるのです。(壁や床に反射した音は直接音より遅く到達する。)この現象によって周波数特性が変化するのです。(上記のマイクの逆の現象です。)実際は物理的な現象(壁や床での反射)をなるべく起こさない事がまず重要ですが、全くゼロにすることは不可能です。
ホールでのこの周波数特性の変化を補正する方法として、一般にEQ(イコライザー)と言われる、ある特定の周波数を変化させる機器を使用します。これによって例えばブーストされた周波数を補正したりするのです。ここで重要なのはEQによって補正をするということは、その周波数において位相を変えているということです。
少し難しいですが、概念だけでも理解をして頂ければ幸いです。上記のことについては、また機会を見てより詳しく説明をしようと思っています。
質問等がありましたら、いつでもメールを頂ければと思います。少し後説が長くなってしまい、申し訳有りません。
次回は、アースワークスの特長とその使用法について書こうと思っています。
次回を楽しみに!!
上記の貴重な資料は、トモカ電気株式会社 飯嶋からの提供です。
デモ等の要望は、飯嶋さんへ連絡をお願いします。
貴重な文献に対して感謝いたします。有り難うございます。
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