Earthworks 用語の解説




用語の解説1 音色の違い

「周波数特性は同じなのに実際に聴くと音が違う」というのはよく経験するところです。これは何が原因なのでしょうか?周波数特性は信頼できないのでしょうか?その謎が解けたのは全くの偶然です。高域用スピーカーユニットの音の違いを調べていたBlackmerは念のため20KHz以上のスペクトルを計測してみました。すると見事に音の違いが20KHz以上のスペクトルの違いと対応していたのです。それだけでは良い音にはなりません。人間の聴覚は、周波数特性と同様に時間的な特性にも敏感です。音の違いの秘密は時間的な特性にもあります。この時間特性をどの様に測定するか?というのが重要になります。アースワークスはその点に着目しました。具体的に採った方法とは様々なマイクのパルス応答特性を詳細に調べることです。この検証によって時間軸に対する動作特性を示す貴重なデータが数多く得られ「大半のマイクが時間軸に対して大きく歪んでいる」(どのマイクも、程度の差こそあれ位相が不正確で、結果として再生波形が歪んでいる)ということが判明しました。つまり時間に対して波形が不正確であるという事です。このようなマイクのインパルス再生波形と実際に耳でく再生音との相関関係は予想もしなかったことでした。結果として、人間が音の違いを識別するにはインパルス波形が重要な役割を果たし、しかも周波数が高くなる程その影響が大きくなることが確かめられたのです。これがアースワークスの開発研究の重要なテーマです。


用語の解説2 20KHz以上の周波数特性の必要性

上述のようにアースワークスEarthworksでは20Hz〜20KHzがフラットなだけでは音の善し悪しを正しく判断することはできないと考えています。現実にはCDのサンプリングレートが44.1KHzである為かオーディオ機器、特にデジタル機器の帯域幅は20Hz〜20KHzあれば実用上は十分である、という考え方が定着している感があります。その反面1930年代初期に発表されたVon Becksyの論文によれば人間の耳は音を5μsecの分解能で識別できるという事実がすでに述べられています。さらにRupert Neveのような世界的権威によれば帯域を20Hz〜20KHzに制限した音と、可聴帯域外まで含む音の違いを殆どの人が聞き分けられると指摘しています。また20KHz以上のスペクトルを多く含む楽器も珍しくありません。これらの楽器の音の特徴を現すのは20KHz以上のスペクトルだといわれています。この点からも、音を識別する上で20KHz以上の周波数も絶対に必要だということが解ります。従ってアースワークスでは20KHz以上のレンジを重視した設計を行っています。

用語の解説3 タイムドメイン(時間軸)特性
 
アースワークスでは時間的な歪をタイムドメイン(時間軸)特性と呼んで開発上一番重視しています。具体的には時間的な歪は位相、トランジェント、パルス応答などを指します。ここでは指向性マイクを例にとって説明しましょう。音波を電気信号に変換する際、特定の周波数が他の周波数よりも早く変換されてしまったり、逆に遅れて変換されたりすることが起こったとします(技術メモ6タイムコヒーレント参照)。このような現象を生じる原因としては第一に機械的要因が挙げられます。
第二に指向性マイクは開口部からダイヤフラムまで、音の伝達経路が複数存在するため、音の到着時間にどうしても位相差が生じます。これは波長が短いほど影響が大きくなります。
第三にダイヤフラムを収納するハウジング内で起こる共振や反射です。一般的に指向性マイクは、正面以外にチューニングを施した開口部を別に設け、二箇所から入ってくる音を合成することで指向性を作り出します。これは音の干渉性(コヒーレンス)を利用したものです。反面、この方法ですとコヒーレンスがあるため位相に悪影響を及ぼし、特に正面以外の方向の音はある周波数同士が打消し合うため特性に凹凸を生じ低域から高域まで周波数特性を平坦に保つのが困難になります。
時間軸という点から見ると指向性マイクは構造上どうしても不正確です。当然元の波形が変形すれば音の色付けとして聞こえる訳です。したがって物理特性が優れた正確なマイクを開発するには無指向性マイクを選択する方が有利です。波形が時間的に正確に変換されれば、演奏をしている環境、例えば部屋の大小や、残響が多いとか少ないとか,部屋の響きの善し悪しなどがリアルに伝わります。タイム・ドメイン(時間軸)が正確であれば透明感、明瞭度、生々しさは明らかに向上します。


用語の解説4 トランジェント特性

タイムドメイン(時間軸)特性の第二の原因としてパルスの立上がりに対する追随性(トランジェントレスポンス)があります。この特性もまた周波数が高いほど影響が大きくなります。この点でも20KHz以上の特性が重要だと主張する根拠があります。具体的には微弱な超高域の信号にマイクのダイヤフラムがどれだけ正確に追随できるかという点にあります。アースワークスではトランジェント特性を向上させる為小口径ダイヤフラムを採用しました。これによって微弱な音波に対する応答精度を高め、ダイヤフラム自体の不要な振動を抑制することが出来ます。またダイヤフラムの直径が半波長になるような周波数では、その周波数の特性に様々な谷やゆらぎを生じます。ダイヤフラムの口径が小さければそのような周波数のアバレを可聴帯域外へ逃がすことが可能になり周波数特性を高域までフラットにする上でも有利です。

用語の解説5 インパルス応答

 
一般に音楽パルスなどがダイヤフラムに印加された場合、ダイヤフラム自体の挙動が入力パルスに対して正確でないとその挙動による影響を受け再生パルスにリンギングや共振、オーバーシュートを生じます。特に波長が短く、立上がりが速く、レベルの大きいパルス、つまり鋭いほど影響は顕著に現れ。入力波形も大きく歪みます。このような不正確な挙動を抑制できれば再生されたパルスは原音に忠実だと考えられます。また臨場感のある音を捉えようと思えば、楽器の波形に含まれるインパルス情報を正確に再現する必要があります。臨場感は音色に立ち上がり特性が加わって初めて再現することができるからです。したがってオーディオ機器に求められる特性は、周波数特性がフラットであるだけでなく、どの周波数のパルス波形でも正確に再現できるということが極めて重要です。「波形を歪ませずに正しく変換することが真実を伝えることに繋がる」と設計者のBlackmerは主張します。具体的に説明しましょう。  第一にマイクにパルス信号が入力されるとダイヤフラムが振動しますが、このときダイヤフラムがすぐに静止せずいつまでも振動していると余分な出力が生じます。これをリンギングと呼びます。これは多かれ少なかれどのマイクも発生しますが特に慣性モーメントが大きい大口径ダイヤダイヤフラムほど不利です。このリンギングが出力波形に加わるため後続する入力波形が歪むのです。このリンギングによる影響はまたしても微弱な可聴帯域外の高域周波数に顕著に現れます。このようにインパルス特性は単なる周波数特性では判らない高域の特性を知る目安となりますのでインパルス特性を測定する必要が生じます。この測定で使用するパルスは可能な限り帯域を限定し、さらにパルス幅は短いほど適しています。これは技術的に難しく簡単に実現できるものではありませんが、アースワークスEarthworksではこの測定に電気のスパークを利用し、波形を200KHz(分解能5μsec)まで正確に測定することができます。本カタログに記載されている測定用マイクのインパルス・レスポンスはこの方法によって測定されたもので、録音用マイクでも確実に音の善し悪しを判断する基準になることが確認されています。
アースワークス社は、時間的特性が指向性マイクに比べ圧倒的に正確である無指向性マイクの利点を活かし、特にパルス応答特性を重視した設計を行うことによって時間的特性が世界的にも最も正確なマイクを作ることに成功しました。
アースワークスの製品は全てこうした設計方針が貫かれています。



用語の解説6 タイム・コヒーレント

音波は唸りや定在波を発生することからも判るように時間的に干渉性(coherency)があります。もし位相特性が、周波数によってマチマチであったり、機械的な理由でゆらぐことがあれば干渉によって原音を劣化させます。したがって時間的にコヒーレント(coherent)である音波の位相をコントロールすることが非常に重要になります。アースワークスでは特に位相を正確に再現することを目標にしています。例えばトランジェント特性やインパルス応答を改善するのもその為です。これは主にマイクのダイヤフラムの挙動や電子回路の性能を改善することで実現されます。一方ダイヤフラムへ到達する信号は、原音からの直接音に加え時間的にも様々な反射音が含まれます。したがって20Hzから20KHz超までどの周波数の信号に対しても位相特性が正確でなくてはなりません。本カタログ中で『タイムコヒーレントな周波数特性』と表現されていれば、単に見かけの特性がフラットであるのではなく、どの周波数成分の位相も時間的に正確に変換され、その結果としてフラットなF特が得られことを示します。アースワークスのマイクに添付されるF特の実測グラフは、お買上げ頂いたマイクの位相特性が正確なタイム・コヒーレントな周波数特性であることを証明するものです。


 今回は、Earthworksの用語の解説文書をお送りしました。
 この資料をお送りいただいたトモカ電気株式会社の飯嶋さんに感謝いたします。

 海外のEarthworks使用レポートが入り次第、掲示したいと思います。

 有難うございました。


上記の貴重な資料は、トモカ電気株式会社 飯嶋からの提供です。

デモ等の要望は、飯嶋さんへ連絡をお願いします。
 その際には、レポートを頂ければ幸いです。より多くの人達に紹介を致します。

貴重な文献に対して感謝いたします。有り難うございます。




資料提供先

トモカ電気株式会社 担当 飯嶋氏
〒101-0021 東京都千代田区外神田1-15-16 ラジオ会館6F TEL 03-3253-6528 FAX 03-3253-6519
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