1.3 Identifying Comb Filters
今回で、Comb Filtersの連載の最終回になります。
最後の章では、Comb Filterの確認という項目でお話ししようと思います。
システムの周波数特性を測定することによって、その特性はピークとディップの複雑な波形に成ることがあります。
イコライゼーションがされる前に、ピークとディップを起こした相互作用について原因を追求することは非常に重要です。
これはシステムを最適化するにあたり、最も効果的な段階を踏むためにも良い方法です。
上記の図表はシステム特性でピークとディップの原因を識別することへの手引きとして、利用していただければ幸いです。
もし、ピークあるいはディップの中心周波数が分っているなら、対応しているTime Offsetは周波数の右に縦列で見ていただけます。(例えば、1st nullの500Hzにおいて、)
もし、このnullが comb filtering によって起こされるなら、Time Ofsetは、1msであり、音源との間に1msの時間差があると云うことです。(此処で云う音源とは、直接音の事です。つまり、直接音に対して反射音が1ms遅れて、入ってきていると云うことです。)
しかし、もしこれが最初のnullでなければ、それより波長の長い周波数のnullなので、周波数特性をもう一度確認をしてください。
また、上の図から1st null(500Hz)の3倍の周波数(1.5KHz)に2番目のnullがあるのが、お分かりでしょうか?(5倍、7倍と3番目、4番目のnullが確認できます。)
null間の周波数幅で、反射のTime Offsetを確認することが出来ます。(この例では、null間の周波数は1KHz(1.5k-500=1K)なので、Time Offsetは、1msとなります。)(ピーク間の周波数幅でもOKです。)
つまり、1st nullの周波数でTime Offsetを確認でき、また、null間の周波数幅でもTime Offsetを確認することが出来ます。
上記の図では、1st nulが500Hzなので、Time Offsetは、1ms。null間の周波数幅は、1KHzなので、Time Offsetは、1ms。(この例では、何度も云いますが、直接音に対して、反射音が1ms遅れて入ってきた周波数特性なのです。)
ここで確認をしておきたいのですが、上記の周波数特性は、その測定ポジションにおいて、良い結果だといえるでしょうか?
上記のような特性が起こり得る状況は、ステージ上のモニターSPに於て、頻繁に起こります。
例えば、フットモニターSP(フットモニターSPは、通常2個ですよね。それに2個のSPを中央の位置を基準として、斜めに設置している。)に於て、2個のモニターSPの中央に立った場合、右のSPと左のSPの距離は、同じですので、単純に2つのSPの音の合成になります。(Time Offsetが生じない。)けれど、少し、中央より右にずれて立ったらどうなるでしょうか?
右のSPに対して、左のSPは、遅れて伝わってきます。(Time Offsetが生じる。)すると中央での立ち位置の特性とは違った特性になります。(上記の図、この場合は1msずれた場合の特性に成ります。)
これがcomb filteringなのです。
実際の現場では、このような状況を経験された方が多いと思います。フットモニターの中央の位置の音と少しずれた位置での音が違うのは、この現象が起きているのです。
モニターリングにおいて、モニターオペレータは、SPのポジションニング及び、これらのTime Offsetの事を考慮し、イコライジングをしなければ成りません。イージーにイコライジングすることは、結果として良い結果を招きません。
Fig 1.1lは、直接音に対して、1ms遅れた反射音があることを表しています。
ソースの間のTime Offsetが分っている場合、上の図表(Table 1.1m)は、どのように周波数特性が冒されるであろうかについて参考になるかと思います。
対応する周波数と最初のnullの周波数は、Time Offsetの右に縦列で見ていただけます。
例えば、1msのTime Offsetがモニタリングポジションにおいて、2つの音源の間に発見されたとします。
comb 周波数間隔は、1KHzであり、500Hzにおいて、最初のディップを生じていることが確認できます。
(2番目のディップは、1.5KHz 3番目のディップは、2.5KHz,,,,,,,,)
ピークは、2番目は、1KHz 3番目は、2KHz,,,,,という風に見ることが出来ます。
上記の図表の見方は、理解していただけたでしょうか?
最後に、上記のこと(Comb filter)を顧慮の上、もう一度、スピーカーの音圧レベルや配置について、考えてみてください。
今回は、Comb filterの最終稿でした。 如何でしたか?
このComb filterを理解することは、実際の現場では非常に役に立つと考えています。
何が何でもEQで処理をするのではなく、SPの位置や音圧レベルを考慮することにより、あまりEQせずに、良い周波数特性を確保することが可能になります。
私の今回の連載の最大の目的は、このこと(Comb filter)を理解していただき、もっと楽にEQすることにより、より良い音場環境を提供して頂くことにあります。
この連載にあたり、長らく読んでいただいたことに感謝いたします。ありがとうございました。
また、分かりにくい点がありましたら、指摘及び質問をお願い致します。
次回の新連載を期待してください。
**質問、感想等が有りましたら、ast@ast-osk.comまでお願いいたします。**
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