L-Acoustics V-DOSC System No.6
2.4 スタックかフライングか
どちらの手法にもそれぞれ賛同するサウンドデザイナーがおり、それを裏付ける議論も多々あります。多<の場合答えは現場の条件によって決まります。
V−DOSCをスタックする場合、アレー内のエレメントは最大限6つまでです。まずいカップリングと干渉フイールドを起こさないように、各アレーの間は少なくとも5,6mあけなくてはなりません。このようなタイプの構成では、しばしばアレーと床面とのカップリングが起きて低減の音圧が増加します。さらにオーデイエンスエリアの近端と遠端とのSPLの差は、従来のシステムほど顕著ではありません。
最後に、シミュレーションスプレッドシートからわかるように、フライングアレーよりも低いものと定義されているスタックアレーは幾何学上の理由から、フライングアレーよりも大きくより均質なカバレッジを実現することができます。
ただしこの議論はV−DOSCにのみ当てはまるものであり、ほかのシステムに対しては一切有効ではありません。
またスタックV−DOSCアレーの限界も考慮しておく必要があります。
縦方向のカバレッジは非常に精密で、インスタレーションにおいてはいかなるミスも許されません。デザイナーは、オーディエンスが立っているのか座っているのかも把握しておく必要があります:アレーの最下部が最前列のオーディエンスの耳の位置よりも高い場合には、バンパーのスクリュージャックを調整して一番下のエレメントを下向きに傾けなくてはなりません。アレーの最下部が低すぎる場合には、最前列では音圧が大きすぎ(耳をす聾する音になってしまうかもしれません)、その後ろの列に対しては音の幕のように作用してしまいます。
理想的には、アレーの最下部はオーディエンスよりもわずかに高く、一番下のエレメントがわずかに下向きに傾いている状態が良いでしょう。
多くの従来のシステムでは、システムが飛ばしてある場合の方がカバレッジは均質になります。こればV−DSCには必ずしも当てはまりません。しかし飛ばした方が便利である理由はいくつも考えられます。そのうちの一つはもちろんサイドラインの問題です。
もう一つの実際的な理由としては、6つより多<のエレメントをアレーに組む場合には、安定性を考えるとフライングにしなくてはならないということがあります。
パフォーマンスの点から考えても、同じカバレッジを実現するのに必要なエレメントの数が増えるということはあるかもしれませんが、結果的にはSPLも音のバランスもより均質にすることができます。
縦方向のカバレッジをシミュレーションする際には、アレーを飛ばす高さに特に注意してください。多くの場合、特定の高さの方がほかの高さよりもカバレッジの最適化が容易であることに気づ<でしょう。また、オーディエンスエリアの中にそれぞれ傾斜の異なる二つのセクションがある場合には、その境界線に近い部分のカバレッジは慎重に決定しなくてはなりません。
2.5 多重音源のアプローチ
お互い近くに位置する多数のラウドスピーカからサウンドを集合的に放射すると、中城、高域で干渉が起きることは知られています。周波数によって様々な指向性ローブが生まれ、全体的結果に深刻な影響を与えるのです。
ラウドスピーカーをカップリングする唯一のコヒーレントな方法は、波面彫刻技術の基準を満たすようにすることです。そしてV−DOSCは縦形アレーの場合のみ、この基準を満たしています。
90度というV−DOSCアレーの名目上の横方向カバレッジが十分でない場合にとるべき解決法は、もちろん最初のアレーの隣に第二のアレーを作るということではありません。
正しいアプローチは、オーディエンスカバレッジを補うもう一つのアレーを別の場所に、最初のアレーから少なくとも5m、できれぱそれ以上離して置くことです。
ステージに一番近いアレーを時間基準とし、その他のアレーを遅らせます。これは同じ信号を受け取っているアレーに対して有効な考え方であり、当然のことながらステレオ構成では左のアレーが右のアレーに(またはその逆)遅れるようなことがあってはいけません。
このアプローチは非常に柔軟性に富み、望ましい基準を満たしあらゆるタイプのオーディエンスをカバーできることが経験によって証明されています。アレーを増やすことのおまけの利点としては、オープンエアの環境では風の影響に強くなるということが挙げられます。
もう一つの利点は、コンソールに限定されないオーディエンスエリアでのステレオ効果の認知です。多重音源アプローチはカバレッジの問題に対する基本的な解決策というだけでなく、空間的な音の広がりを生み出し、サウンドデザインおよび創造性に対しての力強いツールを提供するという意味で多くの可能性を開いてくれます。
克服すべき唯一の問題は、なじみの無いソリューションを受け入れたがらない多くのサウンドエンジニアの姿勢です。しかし彼らがもっとV−DOSCを使うようになれぼ、このような問題は少なくなります。
今回は、VーDOSCのスタックと多重音源について書きました。V-DOSCの場合、普通のホールでは吊ることが現状では不可能なところが多くどうしても通常のスタックになります。その場合の注意点などを書いてみました。参考になればと思います。また、水平がV-DOSCの場合、90度なのでそれ以外のエリアの場合の対処方法も参考になればと思います。
上記のことに対して、質問等が有りましたら一報ください。
次回は、今回のスタックをもう少し具体的に説明をしたいと思います。
次回を楽しみに!!
上記の貴重な資料は、ベステックオーディオ(株)からの提供です。
より多くの人達がこのSYSTEMを理解して頂ければ幸いです。
貴重な文献に対して感謝いたします。有り難うございます。
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