Equlizersについて



* Graohic EQとParametric EQとの比較

 今回は、要請がありGEQとPEQとの違いについて詳しく書きます。
普段、皆さんが良く使われているのはGEQ(1/3 octave)だと思います。このGEQの良い点は簡単でしかも見た目でEQ出来るので非常に便利です。その反面、限られた周波数がしかなく、必ずしもピーク(音場での)がある周波数を的確にEQ出来ないと言う欠点があります。この場合、皆さんはどうしているのでしょうか? そのピークがある周波数に近いEQポイントをEQしているのが現実です。その結果、EQしなくても良い周波数までもがEQされてしまいます。
 参考までにFig 1.1をご覧ください。(下記の図をマウスでクリックしていただければ、拡大します。)

 この図の上の曲線はGEQの正面パネルの周波数ポイント及びパネルに表示されているゲイン(dB)を表示しています。80Hzから2KHzまでの15ポイントを1~5dBカットしています。(図の左の縦軸) 315Hzで最大-5dBカットです。(図を拡大して見てもらうと良く分ると思います。) ここで問題なのが、見た目の周波数カットは上記の図の上の曲線通りですが、実際、EQされているは図の下の曲線なのです。最大で-10dBカットされています。これは非常に問題です。
 つまり、GEQの正面パネル(ツマミ)で、ある周波数が隣接する2つ以上の周波数(EQポイント)をEQした場合、正面パネルでは-3dBづつEQしたつもりが、実際はそれ以上EQされていると云うことになります。お解りでしょうか? 非常に危険な行為です。(オーバーEQ)
 少し、オーバーに書きましたが、現状(現場)においては、これらのことを理解して使用しているのでさほど問題にはなりません。しかし、初心者の方も含めてもう一度理解を深めてください。
 また、PEQに関しては周波数及びQ(帯域幅)を可変出来るので実際のピークの周波数を的確にEQすることが可能です。、、、ですが、PEQにおいても隣接する周波数に関しては、GEQと同じ現象が起きます。(パネルで見て落とした周波数ゲインと実際のゲイン)ただ、この二つ(GEQとPEQ)のEQの典型的に違うところは、PEQの方が周波数及びQを可変出来る点にあります。これにより隣接する周波数同士の影響が少なくなります。(GEQは周波数及びQは固定されている。)

* Complementary Equalization

 次は周波数と位相の関係について、考えてみましょう!!
 アナログに於ては周波数(振幅)と位相の関係は常に密接な関係があります。下記のFig 1.2 (下記の図をマウスでクリックしていただければ、拡大します。)は、450Hz付近の周波数をブースト及びカットしたデータです。ここで注目していただきたいのは、位相です。ブーストした時、位相は遅くなっています。逆にカットした時には早くなっています。

  ここで、想像を働かせてください。上のFig1.2でピークの部分(450Hzの振幅)、これがあるルームにおいて生じたとします。これにPEQを使用してカットしましょう。(Fig 1.2の上の絵のディップ部分の曲線) 結果として、下記のFig1.3の図のようになります。

 これで周波数特性及び位相特性がフラットに成ったと思います。

 ルームなどの環境において、ある特定の場所で、直接音と壁や床などの反射による反射音などがミックスされることによって周波数特性が乱ます。(ピークやディップが出来る)
 ここで重要なことは、直接音より反射音のレベルが大きい場合(SPが壁に向いていて多くの反射音を作り出している場合)、、、いくらEQで補正をしようとしても物理的な影響が強すぎて、何の意味もなくなります。それは、あるポイントでは音が良いが他のポイントでは音が悪いと云う症状が出ます。場所によって反射音のレベルが変わるからです。何度も云うようですがSPのマウントがEQする上に置いて、80%のウエイトを占めます。それだけSPのマウントが重要なのです。(このことはしっかり頭に入れておいてください。)

 次はGEQを使用してEQ補正をした場合を考えてみましょう!!

* Error in bandwidth

ある音場において、Fig 1.4 (上の図)のように450Hz付近にピークが生じたとします。位相は、下の図のようになります。(Complementary Equalization を参考にしてください。)
これをGEQを使ってEQ補正してみましょう。GEQの場合、ぴったりの周波数が無く、必然的に400Hzと500Hzの二つのEQポイントを使って補正することになります。GEQを使って補正をした結果がFig 1.4の上の図のdipカーブです。見ての通りQがワイド過ぎます。(位相にも注目してください。)


Fig 1.4でGEQを使って補正をした結果が Fig 1.5です。確かにピークは物の見事にカットされています。(Fig 1.5の上の図)しかし、450Hzの近接周波数もカットされているのがお解りになるでしょうか? 確かにピークは取り除かれたが、その犠牲としてその近接周波数が犠牲になっています。
位相にも注目してください。ずれているのがお解りになると思います。

 皆さんはこれで正しいと判断されますでしょうか?
 確かにGEQは見た目も含めて使い勝手の良いEQです。しかし、補正するに於て、今まで述べてきたような欠点もあるのも現状です。それを理解して使用していただければ、決して駄目な物ではありません。かえってPEQより使い勝手の良い機器です。
 これは余談になりますが、同じPEQでも、、、
 例えば、同じPEQをシリーズに繋ぎ(A+B)、片方のPEQ(A)で、ある帯域を+6dBブーストし、もう一方のPEQ(B)で、-6dBカット(Aと同じ周波数)したとします。当然、A+BのOUTの周波数特性はフラット(位相も)になると思われるでしょう。しかし、PEQ(機種により)によってはそうならない事があります。これは、PEQの設計によります。このような機器の場合、ブーストしたときと、カットしたときのQが違うのです。なぜ、そのような設計にしてあるかは疑問です。GEQに於ても同じ現象が起こる機種もあります。

 以上でGEQとPEQの違いや周波数特性と位相についての説明を終えます。言葉足らずや分かりにくい表現があったと思いますが、少しでも理解をしていただければと思い、思うがまま書かしていただきました。乱筆乱文お許しください。





Equlizersについての質問



Q.
 初めまして。ASTさんのHPの更新を毎回楽しみにしています
 わたくしは名古屋で音響の仕事をしていますが、位相、特にGEQを使用した時に起きると言われている位相の変化について前々から少し疑問がありましたので、お教えいただけないかと思いメールいたしました。
 よく、GEQを使うと位相が乱れると聞きますが、それはGEQのフェーダー上げ下げする事で信号がその回路(ボリューム)を通過する時に時間的なずれが生じると言 う事なのかなと思っているのですが、本当のところはどう言った原理なのでしょうか。
 また、PEQが位相の乱れが少ないと言われているのはどう言った点からなのでしょうか。
 位相に関してはまだまだよく理解できていないのでお時間のあいている時で結構ですので教えていただけないでしょうか。

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A.
EQをすると言うことは、位相をいじると言うことと同じだとおもっていただいてOKだと思います。アナログ世界では、EQなどで周波数をいじる場合、必ず位相も変化するのです。(デジタルの世界では、必ずしもそうではありません。周波数をいじっても位相を変えないことが出来ます。)
 EQの場合、そのフィルターを構成する都合上、コイル、コンデンサー、抵抗等の
素子を使います。つまり、フィルターを掛けることによって、これらの素子を通る為どうしても位相(時間)と言う問題が発生します。
 また、PEQの方がGEQより位相の乱れが少ないのは、GEQの場合、個々の周波数が固定されています。つまりQも固定だということです。PEQの場合は、周波数、Qが可変で来ます。同じ1KHzを-6dBカットしたとします。GEQの場合は1Kと言ってもその前後のFが広いです。PEQの場合は、Fがバリアブルなので目的の1KにFを持っていくことが可能です。GEQほど前後のFが広くありません。また、PEQではQも狭く出来ます。上記のことを踏まえてこれらふたつの機器の違いは、同じFでも変動する
度合うが違うわけです。(f、Q)どちらが位相の変化がおおきでしょうか?
 Fと位相の関係がアナログの場合、密接な関係に有ります。
抽象的で分かりにくいと思いますが、何となく理解していただいたでしょうか?





Q.
こんにちわ。
HPの「Equlizerについて」の内容で分からない事がありますので質 問させて下さい。
[error in bandwith]のFig1.4と1.5に関してですが、1.4は、EQを 通過した直後の特性で、1.5がEQ後のSPを通したルームの特性と理解すればよいでしょうか。

HPを読んで、自分なりにまとめてみたのが下の1〜3です。
おおまかな理解としてはこんなものでしょうか。

1 補正しようとしているルームの周波数特性と同じfとQをEQで再現することが出来ない限り、結果として位相を乱す事になる。

2 実際の現場においては、いろんな条件が入り交じって来るので、EQや、DELEY を使用して音場を補正できる範囲は限られている。
3 システムとしての完成度がかなりのウエイトを占めるので、機材の選定を含むサウンドデザインが最も重要である。

fとQに関しては今回のレポートでかなり理解できたように思います。ありがとうございました。
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A.
Fig 1.4のデータに関しては、あくまでもデータ上の仮定で、例えば、Fig 1.4の上の図のピークの波形が、発生した場合と云う事です。つまり、この出来たピーク波形をGEQで補正しようとしたのがFig 1.4の上の図のディップの波形です。
 その各々の位相がFig 1.4の下の図です。
 Fig 1.5はFig 1.4で補正をした結果のデータです。
 ですから、この場合、EQとかルームとかの特性と云う問題でなく、単にこの出来たピーク波形をGEQで補正した場合、どうなるかを見ていただきかっただけです。
こんな説明でお解りでしょうか?

 また、1.に関しては、基本的には正しいと思います。しかし、実際現場ではそう単純ではなく、いろんな要素が含まれてきます。100%補正は物理的にも不可能にちかいです。けれど、より100%にちかずけることは可能だと思います。
 どうしても周波数特性だけが注目されて、位相と云うことが、ないがしろにされ気味です。この2つはアナログの場合、密接な関係であると云うことを理解してください。

 2.に関しては、上記の通りです。(SPのマウントが重要だと云うことです。これがEQなどを使って補正するときの80%のウエイトがかかってきます。SPのマウントをチャントしなければ、いくらEQ補正をしても無駄だと云うことです。)

 3.に関してのシステムの完成度についてですが、プロ仕様と云う上に置いて、今、世の中に出ているものに関しては、問題ないと思います。それは、各メーカーによって考え方が違うだけで、それなりに使用できるのであれば(現場で問題なく)OKです。
 重要なのは、そのSPなどの持っている特性を理解して使用することが必要で、そのことを踏まえた上で、サウンドデザインすべきだと考えます。

 上手く、説明できたかは疑問ですが、よろしいでしょうか?



Q.
EQの質問に対する解説の内容について、もう少し教えて下さい。
Fig1.4の周波数特性の下の波形は、400Hzと500Hz の2ポイントを使って補正するとFig1.1の上下2つの波形の関係から考えられるように450Hzを対称に広いQのディップになる事を表している。

Fig1.5は周波数特性、位相特性ともに、2つの波形を相殺させた結果を表している。

以上のように理解すれば良いでしょうか。

また、レポートを読み返していてもう一つ分からない事が出てきました。Fig1.2に付いての文中で、「ブーストした時位相は遅く、カットした時は速くなっている」とありますが、この「位相が速い、遅い」とはどう言う事なのでしょうか。

位相に関しては、ひとつ理解するとまたひとつ分からない事が出て来るようで、難しいものです。
そこでお願いなのですが、この位相に関して理解を深める事ができる書籍など御存じでしたら、お教えいただけないでしょうか。

位相に関する深い知識を持たずに今まで来てしまったので、あまりにも低次元な質問ばかりで申し訳なく思っています。

SIMやSmaart Pro,TEFF,等、それらの特長、違いなどに付いても知りたい
のですが、機会があれば詳しく教えていてだきたいものです。

今後ともよろしくお願いします。



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A.
Fig 1.4とFig 1.5に関しては、基本的にはその解釈でOKです。

Fig 2に関しては、進んでいる、遅れていると言う解釈をしてください。

位相に関する書籍は多数出ていて、どれがベストかは一概にいえません。
自分で探してみて、一番理解出来る物がベストだと思います。

SIMに関しては、このHPの中のFFT関係の項目があると思いますが、基本的にはSIMと同じです。SIMの場合は、ソフト化し、より使いやすくしてあります。
 また、Smaartに関しては、PC機でステレオinput端子があるものであれば、アナライザー感覚で使用できる非常に有効なソフトです。最近、このSmaartに関しての質問が多く、何回か講習会を行っています。
 また、TEFFに関しては、基本的には測定器です。測定した結果を見るための物でその結果をどうしたら良いのかまでは考えていません。
 現実的なのは、Smaartだと思います。SIMに近い機能を持っています。

 こんな感じでよろしいでしょうか?



 今回は、イコライザーについて、普段、疑問に思って要ると云うメールでの投函により私なりに書いてみました。
 如何でしたか? あまり自分でも説明が上手くないと思っています。まだまだ、説明し切れてないところがあります。お許しください。

 これはお願いですが、、、分かりにくい点がありましたら、指摘をお願い致します。

 また、音響に関して分かりにくい点、普段疑問に思っていることがありましたら、私が答えられる範囲で対応したいと考えています。
 今後ともよろしくお願い致します。




参考資料 Meyer Sound Design Reference for Sound Reinforcement(MEYER Sound Inc.)


**質問、感想等が有りましたら、ast@ast-osk.comまでお願いいたします。**


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